町工場がIoTで生産業務を大幅に改善

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現場に話を聞くと、「停止したのがわからないから、改善のしようがない」という回答。そこで、設備の異常を表示する「あんどん」を設置すればよいと考えました。しかし、あんどんの設置には、専用の表示装置を取り付ける高所作業や有線LANの設置などが必要で、ラインを変更したときには有線LANのやり直しも必要になるなど、かなりのコストがかかります。考えた結果、誕生したのが「iスマートあんどん」と呼ばれる仕組みでした。
iスマートあんどん
iスマートあんどんは、ラインに「セレクトスイッチ」を取り付け、ラインの状況をセンサー子機からセンサー親機に無線で送信。センサー親機で受け取ったラインの状況は、汎用のモニターに表示するほか、取り付けられたスピーカーにより音声でも警報します。黒川氏は「汎用モニターや無線LANを利用したことで、高所作業やLAN工事が不要となり、一般的なあんどんに比べて10分の1のコストで導入できるようになりました」と話します。
iスマートあんどんにより、停止時間は低減できたのですが、生産個数はなかなか増えませんでした。調べてみると、製品が1個できる時間である「サイクルタイム」にばらつきがありました。生産個数を増やすには、ラインの稼働時間とサイクルタイムの把握が重要です。そこで正確なサイクルタイムを把握するための仕組みとして、“第2世代”となる「サイクルタイムモニター」の開発がスタートします。
サイクルタイムモニター
黒川氏は「サイクルタイムモニターは、シグナルタワーに取り付けた光センサーや、シグナルタワーのない昭和の機械に取り付けた磁気センサーのオン/オフによるパルス信号が送信機から送信され、受信機は受け取ったデータをクラウド上に蓄積します。クラウド上のデータはスマートフォンで確認することができます。これにより、生産個数やサイクルタイム、停止時刻・時間を、リアルタイムに把握できます」と話します。
サイクルタイムモニターを実現したことによる業務改善の効果としては、西尾工場の切削ラインの出来高が69%向上したほか、工程内の不良率を20分の1に低減しています。また全社での効果は、設備投資額を累計で3億3000万円削減したほか、製造工数を4%(2万時間)低減しています。4%の設備工数削減を労務費に換算すると、1億円以上の削減効果を実現したことになります。
西尾工場の切削ラインでの改善効果例

中小製造業の生産性向上のお手伝いをしたい

旭鉄工では第2世代まで自社開発で対応してきました。しかしシステムが複雑化してきたために、これ以上、自社開発で拡張することは困難でした。黒川氏は「第3世代の開発については専門家に任せようということになり、レッド・ハットとの協業で開発することを決めました。レッド・ハットをパートナーに選定した理由は、ITの素人である我々にも、わかりやすい言葉でサポートしてもらえたからです」と話します。
完成した“第3世代”は、第1世代、第2世代の機能を統合し、さらに人工知能(AI)を搭載することで、「製造ライン遠隔モニタリングサービス」として構築されています。AIを搭載することで、設備が正常に稼働しているか、異常なのかといった状態を瞬時に判断できるようになりました。この製造ライン遠隔モニタリングサービスを、拡販することを目的とした会社「i Smart Technologies」が2016年9月に設立されています。
2ライン分システム一式
木村氏は「当たり前ですが、IoTの導入は“目的”ではなく“手段”です。どこのIoTシステムを使っても問題は改善できますが、製造ライン遠隔モニタリングサービスは、現場で使いやすく鍛え上げられたシステムで、より効果が期待できます。問題が見えても対策方法が分からない場合には、サポートも提供します。町工場でも成果の出せるIoTで、日本の中小製造業の生産性向上のお手伝いをしたいと思っています」と話しています。
「製造ライン遠隔モニタリングサービス」のデモビデオ。
「製造ライン遠隔モニタリングサービス」のデモビデオ。
( 出典:i Smart Technologies製品紹介サイト:http://istc.co.jp/service/index.html )

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